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水谷ペイント ナノコンポジットMUKIを発表
水谷ペイントがサプライズ発表、その名もナノコンポジットMUKI
水谷ペイントは販売店、パートナー施工店に向け製品説明会を実施し、そこでナノコンポジットMUKIをサプライズ発表しました。
ナノコンポジットMUKIはナノコンポジットシリーズの最上級グレードとして、ナノコンポジットWやナノコンポジットFの艶消しでありつつ超低汚染という従来までの機能はそのままに無機系塗料化することによりナノコンポジットFの期待耐用年数20年を上回る23年〜25年という超高耐候性を実現した塗料となります。
発売は今年の7月頃を予定しているとのことで最終的な調整を行なっていると思われます。

いま、塗料業界は無機系塗料へ
今回、水谷ペイントより発表されたナノコンポジットMUKIはその名の通り無機系塗料なのですが、最近ですと日本ペイントのグランセラトップ1液水性など、大手メーカーからも多数新製品がリリースされています。
10年ほど前に「ラジカル制御型」塗料が発売されてトレンドとなったように、2025年の現在は無機系塗料が次のトレンドになりつつあるのです。
無機系塗料とは
無機系塗料とは従来、塗料の樹脂は耐候性の低い順にアクリル<ウレタン<シリコン<フッ素となっていましたが、フッ素を超える耐久性として無機物を使い、耐用年数を向上させた塗料のことを指します。
無機物とはガラスや陶器、セラミックなどの物質であり、炭素を含まない物質で、紫外線によって劣化しないという特徴を持っています。
ただしガラスや陶器はご存知の通り、硬く、そのままでは塗料にすることはできません。よって最近の無機系塗料というのは有機物と無機物を上手に混合(ハイブリット)することにより塗料に必要な柔軟性を確保しつつ耐用年数を向上させた塗料のことを指します。

無機系塗料が流行の理由
無機系塗料がこれからのトレンドとなりつつあるにはいくつかの理由があると思われます。以下が私が考える主な理由です。
・高品質への追求
・無機系塗料の認知度の向上
・PFAS問題によるフッ素樹脂塗料の地位の低下
スマートフォンの普及に代表されるネット社会の中、ネットで情報を簡単に入手できるようになったことで、施主様が「この塗料がいい」とお調べになられているケースが従来よりかなり多くなりました。
シリコンよりもフッ素、フッ素よりも無機系の方が塗料の品質が高いと言う情報はいとも簡単に得られるようになり、また大手メーカー各社が無機系塗料をラインナップしたことにより、「無機系塗料」という言葉の認知度が一気に向上したことが流行の一因であると考えられます。
また数年前に話題となったフッ素化合物のPFAS(ピーファス)問題というものもフッ素からの脱却を促進する大きな原因となっていると思われます。
PFAS問題って何?
PFAS問題とは数年前に話題となった有害なフッ素化合物による問題のことで、最も身近なもので言えばフライパンのテフロン加工に有害なフッ素が使われていることがわかり、環境先進国の多いヨーロッパで規制がかかったというニュースをご存知ではないでしょうか。
フッ素化合物は数千種類ありますが、その中でいくつかのフッ素化合物が危険物質としてと特定され使用制限がかかりました。
この有害なフッ素化合物は塗料にも使用されているケースがあり、今後有害性のないフッ素化合物への切り替えが行われたり、最悪の場合は当該製品は販売を終了することになる可能性もあります。
では有害性のないフッ素化合物を使用すれば問題ないようにも思われますが、塗料メーカーからするとそうでもないようです。
まずフッ素というもの自体のイメージの悪化、次に原材料の輸入ルートの制限、またPFAS問題によって引き起こされたフッ素樹脂自体の価格の高騰といった問題があり、フッ素樹脂塗料を開発・販売し続けるのはリスクと考える傾向があります。
今の時点では各メーカーともヨーロッパを中心とした動向を静観する姿勢ですが、今後新製品として研究開発費を注ぎ込みフッ素樹脂塗料を開発した後にその塗料が規制の対象となってしまうと、企業としての損失があまりにも大きくなってしまいます。
そこでフッ素の代替製品として各社が開発に注力しているのが無機系塗料ということになります。
無機系塗料の定義
従来のシリコン樹脂塗料やフッ素樹脂塗料は塗料の樹脂中に少量でもシリコンやフッ素が含まれていればシリコン樹脂塗料、フッ素樹脂塗料と名乗ることができました。
ところが今回の無機系塗料だけは少し状況が異なります。
というのもほぼ全ての塗料がすでに無機成分を含有しているからです。例えば塗料で色をつけるために顔料と呼ばれる粉が入りますが、代表的な顔料として酸化チタンという顔料があります。こちらはチタン、金属ですので無機物となります。
また現在外壁塗料で最もスタンダードであるシリコン樹脂塗料はシロキサン結合と呼ばれる反応が起き、樹脂成分の中で無機物となります。
広い意味で言えばシロキサン結合をするシリコン樹脂塗料は全て無機系塗料となりますし、さらに広い意味で言えば酸化チタン顔料の入った塗料は全て無機塗料ということになってしまいます。
無機系塗料は数種類に分類することができ、今日本で多く販売されている無機塗料はシロキサン結合量をシリコン樹脂塗料よりも増やしたものを無機系塗料として販売しています。
技術的に言えばシリコン樹脂塗料の延長線上にある塗料ということになります。
無機含有率何%以上というような各社共通の明確な基準というものはありませんので、各社独自の基準をクリアしたものを無機系塗料と名乗って販売しているということになります。

ナノコンポジットWって元々無機系塗料!?
水谷ペイントのナノコンポジットWは上記のシロキサン結合量を増やす形ではなく、無機成分を有機成分で包み込む独自のナノコンポジットエマルション樹脂を使用し、低汚染性(汚れのつきにくさ)と高耐久性を両立した塗料でした。
その無機成分の配合量としては50%を超えると言われており、元々無機系塗料と名乗っても全く問題のないレベルの無機成分含有量を誇っています。
ナノコンポジットWについてはこちらのブログ記事で詳しく解説しています
私は今回発表されたナノコンポジットMUKIには期待をすると同時にいくつかの懸念点もあります。
ナノコンポジットWは発売当初、その塗膜の硬さからひび割れが発生する等、問題点を多く指摘される塗料でした。
しかし水谷ペイントの開発陣は地道に改良を続け、柔軟性の向上に成功。現在では他の外壁用塗料と遜色のないレベルにまで達しています。
ナノコンポジットMUKIはナノコンポジットWよりも確実に無機含有量が増えますので、柔軟性の確保という点が最も懸念される点となります。
また現状伝わってきている情報としては期待耐用年数は23年〜25年ということで、同社で25年耐用する屋根用塗料がないという点も挙げられます。
住宅の外壁塗装においては屋根用塗料と外壁用塗料の耐用年数を揃えるということは当然のことで、同一メーカーでなければならないということではありませんが、外壁屋根を水谷ペイントで統一することが現状ではできないということになってしまいます。

まとめ
現在島田塗装工業所で最もお客様から選ばれているナノコンポジットW。同シリーズの最高峰として発表されたナノコンポジットMUKIですので、期待は高まります。
発売は2025年7月頃とのことですので、まだ実際に触れることはできませんが、発売後はすぐさまテスト施行を行なってレポートができればと思っております。
またこの記事中のナノコンポジットMUKIの情報は発売前の事前情報であり、発売時には変更となる場合があります。