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塗料の耐用年数について

代表の島田です。

外壁塗装をご検討中の方は施工店選びの他に塗料選びもされることが多いかと思います。

塗料のことを調べる中で多くのお客様が最も重視するのは「耐用年数」というものではないでしょうか。

「耐用年数」とは次回のお塗り替えまでの目安になりますので非常に重要な性能なのですが、実はメーカーによってその「耐用年数」というものの考え方が違っていることをご存知でしょうか。

今回は、塗料の闇と言えるかも知れない、そんな一面と各メーカーから出されているデータの読み取り方をお教えいたします。

※この記事は一般の方向けを想定しており一部表現をわかりやすいように変更しております。またマニアックな内容も含まれますので、その点ご了承の上お読みいただければと思います。

INDEX
①そもそも期待耐用年数って何?
②そもそも塗料の劣化って何?
③各メーカーの考え方の違いとは
④促進耐候性試験(キセノンランプ法)とは?
⑤まとめ

①そもそも期待耐用年数って何?
外壁塗装をご検討中で、塗料についてお調べになられている方や既に塗装店の見積もりをお持ちの方は各塗料のカタログを見たことがあるのではないでしょうか。
今では各塗料メーカーのホームページに行けば塗料のカタログをPDFでダウンロードできるようになっている場合が多いと思います。
そのカタログを見たときに「期待耐用年数15年」等の表記がされているかと思います。
期待耐用年数とは「次回塗り替えまでの目安とされる年数」とされています。
でも実はこれ「期待耐用年数」というものの定義があるわけではないのです。
あくまで各メーカーが提示する次回お塗り替えまでの目安なので、Aというメーカーが、この塗料は次回塗り替えまで15年大丈夫ですと言えば、期待耐用年数15年の塗料となるのです。
そしてメーカーによってはそもそも期待耐用年数というものを表記していないメーカーもあります。
では次の章ではまず塗料の劣化とは何か、そのメカニズムを探ります。

②そもそも塗料の劣化って何?
塗料とは樹脂成分(アクリル、シリコン、フッ素等)と顔料(色をつけるためのもの)と添加物(希釈剤等)の混合物が塗料です。
実は劣化の尺度には大きく分けて2つの尺度があるのをご存知でしょうか。
1、樹脂成分の劣化
2、顔料成分の劣化
樹脂成分の劣化とはいわゆるチョーキングと呼ばれる現象で劣化がわかります。塗膜を触ったときに手に粉のようなものが付着する現象です。
これは樹脂成分の劣化が原因で、顔料の成分を塗膜内に留めておくことができなくなり、顔料が流出して起こる現象です。
よって、チョーキング現象とは樹脂成分の劣化現象のということになります。
樹脂成分の劣化とは別に塗料にはもう一つ顔料成分の劣化というものがあります。こちらはいわゆる色褪せというものです。色褪せは主に濃色や彩色(鮮かな色)で起こりやすい現象です。これは太陽の紫外線によって顔料が劣化を起こすことによって起こる現象です。
実はこの二つの劣化は別々のタイミングでやってきます。
先述した通り、濃色や彩色は色褪せが早く、淡彩色(あわい白よりの色)は色褪せが遅いので、一概には言えないのですが、最近の高耐候型の塗料の場合ですと色褪せの方が先に起こり、樹脂成分の劣化の方が後になってやってくる場合が多いです。
この2つの劣化速度の違いによって、各メーカーの劣化というものの捉え方や考え方が違う原因の一つになっているのです。

③各メーカーの考え方の違いとは
1の章で期待耐用年数とは各メーカーがそれぞれ次回塗り替えまでの目安として提示しているだけと述べました。
ではメーカーは何を基準に期待耐用年数というものを定めているのでしょうか。
ここからは様々なメーカーの担当者とお話しをさせていただいている中で判明してきた事実です。
塗料メーカーAの場合
樹脂成分の劣化が始まり、建物の躯体を十分に保護する機能が失われつつある年数を期待耐用年数としているとのことでした。
塗料は年数とともに劣化を起こし、少しずつではありますが塗膜が薄くなっていきます。この塗料メーカーAの場合はある一定の塗膜の厚さになった時に期待耐用年数が切れたと判断するそうです。
塗料メーカーBの場合
メーカーの定めた標準塗布量(1㎡当たり、何Kgの塗料を塗るか)の場合、その塗膜が自社のある規定よりも薄くなると想定される年数を期待耐用年数にしているとのことでした。
先程の塗料メーカーAと同じことを言っているようですが、そのAもBもその規定の膜厚(塗料の膜の厚さ)に統一基準がないのです。
塗料メーカーCの場合
このメーカーは期待耐用年数をカタログに表記しないメーカーです。例えばメーカーに「〇〇(塗料名)の期待耐用年数は何年ですか?」と質問をしてもあまり明確な回答をしてくれないメーカーです。
様々なルートで複数の塗料の期待耐用年数をメーカーから聞く限り、この塗料メーカーCは極端に他社よりも短い期待耐用年数を回答してきています。これは塗膜の劣化とは樹脂成分の劣化だけでなく美観を含めた劣化として案内しているとのことでした。
よって色褪せも加味して期待耐用年数を設定しているのです。そのため他社よりも極端に短い耐用年数を定めているのです。
塗料メーカーDの場合
JIS規格に則り、光沢保持率80%を基準に設定をしているとのことでした。光沢保持率については次章で詳しく述べますが、実際の現場で塗装をされた場合は紫外線だけでなく風雨や塩害等様々な要因が劣化の原因となるので期待耐用年数として明確に表示するのは難しいとのことでした。

先にも述べた通り、期待耐用年数というものの基準が各メーカーバラバラであり、統一の基準が存在しないのである意味、メーカーの自由に設定できてしまうというこのになります。
極端な例えをするとXという塗料があり、この塗料はY社の基準では期待耐用年数10年の塗料であったとしてもZ社では期待耐用年数15年の基準である可能性もあります。もちろん極端に長い期待耐用年数を謳うのは後のクレームにつながる可能性があり、メーカーとしても気をつけて設定はしていると思います。ここ日本でも北は北海道、西は沖縄と全く気候が異なり、特に沖縄などは紫外線が強く北海道に比べて劣化の速度が速いのです。こういった観点から期待耐用年数の設定はメーカーにとって非常に難しい問題であるというのも納得できます。
しかし我々塗装業社や一般のお客様が塗料を選ぶ際にはこの期待耐用年数というものを信じざるを得ないでしょう。

果たしてメーカーの期待耐用年数というものが全く信用できないのか、何を信用したらいいのか、ここから先は塗料を選ぶ際の一つの判断材料となるデータの見方をお教えします。

④促進耐候性試験(キセノンランプ法)

↑促進耐候性試験の様子 アステックペイントのホームページ内から引用
キセノンランプ法は塗料の塗膜性能の測定方法で唯一JISで規定されている試験です。
促進耐候性試験についてはこちら(アステックペイントHP)に詳しく解説してありますので、詳しく知りたい方は左のリンクからご覧ください。
ほとんどの塗料のカタログにはこのキセノンランプ法の試験結果をグラフで載せています。


↑に載せたのはアステックペイントのスーパーシャネツサーモシリーズのキセノンランプ法試験結果です。
このグラフは塗料を塗った直後の光沢を100としてキセノンランプという太陽光よりも劣化速度の早まる光を塗膜に照射し、例えば2000時間照射時にはその光沢が何%保持できているかによって、塗料の耐候性を試験するものです。(おおよそ250〜300時間程の照射で自然光1年分の劣化が起こると言われています)
塗料によって最大照射時間は様々ですが、例えばスーパーシャネツサーモFの場合、5000時間照射後に光沢保持率93%程度なのがわかると思います。
ちなみにこのスーパーシャネツサーモFの期待耐用年数はメーカー公表値で16年〜20年となっています。
この5000時間93%を一つの基準と考えてみましょう。

↑は水谷ペイントのナノルーフ20の試験結果です。
こちらは最大で10000時間の照射を行なっており、10000時間照射後も光沢保持率80%とかなり優秀な結果を出しているのですが、5000時間で見ると光沢保持率は91%程度で、メーカー公表値の期待耐用年数は20年となっています。

↑は日本ペイントのパーフェクトセラミックベストの試験結果です。
こちらは5000時間で95%程度の光沢保持率となっていますが、日本ペイントは期待耐用年数を公表していません。
ただし、先のスーパーシャネツサーモFやナノルーフ20の基準で考えれば期待耐用年数は20年以上であると言えるかもしれません。

⑤まとめ
今回の記事のまとめです。
・期待耐用年数とは次回塗り替えまでの目安の年数
・期待耐用年数はメーカー間での統一基準がない
・劣化とは樹脂の劣化と顔料の劣化がある
・促進耐候性試験が唯一国の定めた塗膜耐久性試験である
・光沢保持率で他の塗料との比較をすると性能差がわかりやすい

期待耐用年数とは塗料を選ぶ際に非常に重要であるにも関わらずメーカー間での統一基準がないために、メーカーの枠を超えて塗料を比較した時にはメーカー公表値だけでは単純比較ができないということがお分かりいただけたのではないでしょうか。
促進耐候性試験(キセノンランプ法)の試験結果で比較すれば耐候性の優劣が判断できます。しかし実際に塗装した際には劣化の要因は紫外線だけでなく、風雨や熱、塩害、排気ガスなど様々な要因があり、促進耐候性試験だけで優劣をつけるのも難しいことも事実です。
また塗料には遮熱性能の有無や低汚染性の優劣などそれぞれに特徴を持った塗料も多く存在しますので塗料を選ぶ際は耐候性だけで選ぶのではなく、コストパフォーマンスなども勘案しながら最も自分に合う塗料はどれかを考える必要があります。
塗装を業者に依頼する際にはご自身が重視する条件(遮熱塗料で15年以上持つ塗料がいい等)をしっかりと伝えることにより、それぞれに合った塗料を提案してもらいやすくなるはずです。
弊社ホームページ内に外壁塗料比較として厳選した塗料の比較を一覧にまとめたページがあります。こちらを参考にご自身の重視する性能は何かを一度考えてみてはいかがでしょうか。

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